ときどき、パニック映画を反芻したくなる症状があってこの度は『2012』を観ようという趣向である。2009年のこの映画には以前から感心していないところがあり、つまりノアの箱舟の搭乗基準に金銭枠があるというあたりは、メタレベルでは21世紀以降も人間がどんどん下品になっている、その証左とみえるけれど、物語としてもただ興醒めである。世界が滅びようという時に札束の心配をするような話は昔なら喜劇として描かれたはずだが、これが大真面目なので、なけなしのリアリティも雲散することになる。地殻変動が主役の大嘘であるのなら、その他はそれらしく作るのが常道ではあるまいか。