アンブロークン

『アンブロークン』を観る。ローラ=ヒレンブランドのベストセラーを原作にアンジェリーナ=ジュリーが監督をした映画だけれど、反日のレッテルを貼られて日本公開が一時危ぶまれたことで話題になったのは記憶に新しい。だがしかし、観れば本作の何を封じようとしたのかが疑問になる内容で、何かの話題づくりかと疑ったくらいだけれど、本当だとすれば相当にキモチの悪い話である。確かに戦時捕虜の扱いは酷いものだが、実際もほとんどこれに近かったに違いなく、何しろ自軍の戦没者の6割以上が飢餓によって亡くなったといわれる軍隊のことなのだ。
太平洋戦線を扱っているけれど、B-24に爆撃手として搭乗し、機体の不良で着水遭難した主人公が47日間漂流した挙句に日本軍に捕虜として収容されるというサバイバルの経緯が半分で、過酷といえば太平洋の地獄のほうが上であろう。これをどのように生き抜いたかが今ひとつ釈然としないあたりが今ひとつといえば今ひとつ。コーエン兄弟が脚本に入っているのだけれど、実話の脚色だけあって、起伏は控えめなのである。
『アバウト・タイム』のドーナル=グリーソンが主人公とともに生き残るパイロットの役で出ていて、相変わらずいい人のオーラを振りまいているのだけれど、もともと痩せているにして、漂流後はアバラの浮き出た姿で亡霊のような有り様となっており、これにはどれほど特殊効果が入っているのかと惑うほどである。時どき、やけに肉付きのいい捕虜が登場する虜囚ものの映画があるけれど、本作にかぎってはそういうことはない。妙にモダンな東京のシーンには監督の趣味が表出していると思うけれど、B-24の作戦行動を含めて、描写は生真面目といえるのではないか。
一方、渡辺伍長役のMiyaviは役者の醸し出す存在感は新鮮といえるかも知れないけれど、腐女子が妄想したようなキャラクターで、さほど見せ場があるわけでもなく、こればかりはいかがなものかと思わざるをえない。戦後、戦犯指定を逃げのびた本人の外見はオッサンに他ならず、ある種の純粋さを想像させる余地は全くないのである。

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