最近観た『エベレスト』で不思議だったのは、1996年の事故で同じく遭難した台湾隊の存在が描かれていないことである。史実にはロブ=ホールとスコット=フィッシャーの隊のほか、南アフリカに加えて台湾の登山隊が登場する。台湾隊の隊長である高銘和は、一度見捨てられながら奇跡的に自力での下山を遂げたベック=ウェザーズと同じヘリコプターで救出されており、物語上の輻輳を避けるために割愛されたのかと思ったのだけれど、実際には中国市場で公開する際の面倒を回避する自己規制が入ったのではあるまいか。
映画『ウォークラフト』はアメリカ本国の興行が失敗であったにもかかわらず、中国での大ヒットにより続編が検討されているという話だけれど、マーケットとしての中国を優先する判断というのは今後も幅を利かせるに違いなく、中華民国の存在は薄れていくだろう。