オデッセイ

『オデッセイ』を観る。たびたびあることだが『火星の人』という秀逸な原作邦題が、画面のイメージに合わないという判断は仕方ないとして、『オデッセイ』という意味のわからないタイトルになっているのは何故なのか。それはともかく。
エンドロールの最後に、この映画に投じられた膨大な労力への謝辞があるけれど、画面の精密さは容易にそれを想像させるもので、全編を通じリドリー=スコットはすごい仕事をしていると感嘆せざるを得ない。脚本は『キャビン』の気鋭ドリュー=ゴダードで、基本的には原作に忠実であるけれど、火星上でのサバイバルと救出の試みのエピソードに集中するシンプルな話の運びとなっており142分の密度もまた高い。原作の小説も素晴らしかったが、映画も傑作であろう。
そして物語の最後、アレス5のミッションが始まるところまで描いているのは余分ともみえるけれど、さにあらず、もともと宇宙開発に思い入れのあるアマチュアがネットで公開していた小説がもとになっている原作のスピリットを汲んだものにみえ、その心意気は熱い。ディスコミュージックの使い方も効果的で、NASAが抽象的に体現していた20世紀の良い部分を21世紀に受け継ぐ話なのである。これは盛り上がる。