『ギヴァー 記憶を注ぐ者』を観る。原作はロイス=ローリーのディストピア小説で、もはや古典の域に近いけれど、最近では『ダイバージェント』みたいなヤングアダルト小説が設定をパクっているので、映画化では後追いのかたちとなったこちらがエピゴーネンに見做されかねない。ジェフ=ブリッジスやメリル=ストリープみたいな大どころに加えて何故かテイラー=スウィフトがチラリと出演しており、布陣は重厚とみえるけれど、そもそも原作の小説が描こうとしているのはハリウッド的な面白さのあるテーマではないので、エンターテイメント映画として成り立たせようと思えばかなり分が悪い。そうはいってもそれなりに忠実に世界観を映像化しようとしているフシはあるにして、オリジナルの結末では観客テストを乗り越えることができなかったと見えて、だいぶ妙なことになっており、これでは台なしというものではあるまいか。管理社会の抑圧を告発するはずの物語が、消費社会の要求に取り込まれるかたちで自ら結末を書き足していることこそディストピア的というものであろう。だいたい訳がわからないし、なんとも残念なことである。