クライム・スピード

『クライム・スピード』を観る。スティーヴ=マックイーンの『セントルイス銀行強盗』を下敷きにしているという触れ込みだが、実際のところはまったく関係ない。一応、籠城も銃撃戦もあって、しかし無理矢理、派手にみせている印象もまたあり、仮に企画初期に念頭においていた原典があったとしても、大向こうにウケる内容を狙って、かなり漂流してしまった感がある。実話にインスパイアされたという『セントルイス銀行強盗』を踏まえて、何でこうなってしまうのか。それに、今どき銀行強盗を扱えば『ヒート』や『ザ・タウン』と比較されざるを得ず、そもそも分が悪い。
エイドリアン=ブロディが弟を犯罪に巻き込むろくでなしの兄の役だけれど、最近のこの人がこんな役ばかりやっているのも謎で、もともとはマッチョや粗暴犯という雰囲気でもないと思うのである。主人公のヘイデン=クリステンセンもいいところなしで、ことに放り出したような結末は酷いというほかなく、役者も気の毒。

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