シン・ゴジラ

『シン・ゴジラ』を観る。
かつての平成ガメラ三部作を奉じつつ、どうして『ゴジラ』にはこれができないのかと難じて、しかし平成ガメラの影響を強く感じるギャレス=エドワーズ版の『GODZILLA』を一応の到達点として、なんとなく辻褄を合わせたような気になっていたわけである。「シン」という言葉のイカサマっぽさに漠然とした不安を感じていなかったと言っても嘘になる。先行作品へのオマージュをセンスよく織り込んでみせながら、土壇場で思弁的な世界に入っていってしまう庵野秀明という人を今ひとつ信じ切れずにいたのだけれど。
杞憂だった。傑作であり、何なら平成ガメラのあの芳醇な一作目を超えたと言ってもいい。311を経験していないこの世界のゴジラを、我々は311を経験することによって知っているがゆえに。本田猪四郎は原爆と核実験を踏まえて1954年の『ゴジラ』を制作したけれど、あの3月、庵野監督はこんなビジョンを幻視していたということか。全編を通してアレゴリーの力は強烈で、もちろんのこと単に怪獣が好きなんですというような映画ではないのだが、しかし上質の怪獣映画でもあって、これは何度でも観る必要がある。