チャイルド44

いうまでもなく、評判のよい小説を読み漏らしていることはままあり、トム=ロブ・スミスの『チャイルド44』もそのひとつで今頃、読み始めている。1950年代のソビエト連邦で、主人公となる捜査官の内的ロジックはもちろん現代的に民主化などされておらず、10人の無実の人間を苦しめるよりも一人の反逆者を逃すほうが罪深いという内なる声は意表をついて、価値観というものの相対性を突きつけてくる点で啓蒙的な側面すらあり、なかなかに展開が楽しみな感じ。