『ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります』を観る。モーガン=フリーマンとダイアン=キートンが、かつて偏見を乗り越え結婚し、もうかれこれ40年以上も連れ添っている仲睦まじい夫婦を演じている。老境にあって上り下りの難しくなってきたブルックリンの5階のアパートメントを売ることを検討してオープンハウスをするのだけれど、体のしんどくなってきた夫のほうはしかし今ひとつ乗り気じゃないというあたりでドラマは進展する。犬の手術とか、テレビのなかで進行しているテロリスト騒ぎとか、並行してトラブルらしきことも起きるのだけれど、平和な夫婦が必要もないのに市場取引に参加して無駄な疲弊に気づくという主線での、経済的な価値観のせめぎ合いが前面に立ち過ぎて、素材がうまく煮込んである感じがあまりない。アメリカで生きることの日常的な心配ごとと楽しみのようなものは、原作の小説のほうがよく書けているのではあるまいか。そうはいってもニューヨークの生活感そのものとランドスケープの素晴らしさは堪能できて、これは楽しんだ。