フレンチアルプスで起きたこと

『フレンチアルプスで起きたこと』を観る。ヴィヴァルディの『夏』、ことさらに切迫したアレグロをBGMとして、しかし舞台は冬、アルプスの優雅なスキーリゾートで起きる家族の事件。淡々とした邦題の言外には何となく凄惨な事件の雰囲気があるけれど、家族の内面においては確かに凄惨な事件が起きているのでちょっとうまいと思う。
音楽の使い方もなかなかのものだし、動きの少ない長回しの緊迫感も大したものなのである。全編のキーとなる場面で、雪煙が画面を白くして鎮まるまでのシークエンスは絶品。アルプスの山間に響く人工的な音のシーンが、幾つも合間に挟まれているのだけれど、この演出も効果的で、とにかくアイディアが豊富に詰め込まれており、機微の描きようは上質なドラマになっていて、かなり楽しめる。大人の映画らしいちょっと苦味のある結末も気が利いているし、傑作といえるのではあるまいか。

冬