『ブラックハット』を観る。もともと、マイケル=マンの画風とハッカーのイメージは合わないと思っていたのだけれど案の定、画面は香港の湿度が写り込んだような色温度でハイテクの肌触りは全くなく、しかしこれには妙な異化効果があるといえばあって、新鮮と言えなくもない。題材が何であれ、己がスタイルを崩さない御大は立派といえよう。ハッキングそのものは電子回路のCGに光が走る類のあまりにも古風な描写がされていて、意味も表現としての効果もないこれを延々やられるのには辟易するにして。
実際のところ、監督はハッカー要素にはさほど興味がなかったであろうし、香港の原発事故についても科学考証は粗雑というほかない。
舞台の半分は香港とジャカルタに移り、そうは言っても、ここでの立ち回りにはマイケル=マンらしい気合の入った銃撃戦と夜景があってなかなかいける。市場としての中国を強く意識した作品とみえて、ヒロインはタン=ウェイというところもポイントが高く、そうは言ってもマン節の炸裂する後半はなかなか楽しんだのである。