『マジック・イン・ムーンライト』を観る。ウディ=アレンがいわゆる上流階級における、言ってしまえばどうでもいいトラブルと恋を題材にして、南仏を舞台に撮ったいつもの映画。エマ=ストーンが自称霊能者、コリン=ファースがこの正体を暴こうとする奇術師の役回り。1920年代の若い娘を演じるエマ=ストーンは彼女のキャリアでもちょっと記憶にないくらいチャーミングだけれど、父親でもおかしくない年齢のコリン=ファースとのロマンスにはいささか無理がある。ウディ=アレン特有の微妙な気色悪さが、このあたりに表出している気がするけれど、これに限らず、映画におけるロマンスの年の差は近年ひらく一方だという、以前に読んだ記事をあわせて思い出す。ヒーローは一線を引退する気配なく、あるべき新陳代謝が進まないのは、映画の観客自体が中高年に偏ってきているということでもあるのではなかろうか。ウディ=アレンの映画を観る層が平均50歳以上であっても驚かない。