マッド・マックス 怒りのデス・ロード

『マッド・マックス 怒りのデス・ロード』を観る。評判の高さは知っていたし、ポストアポカリプスものは好きなのだけれど『マッド・マックス2』のヒャッハーな世界観はちょっと趣味が合わないので結局、今ごろになってしまったのである。往年と同じジョージ=ミラーが監督というところにも疑義があったのだが、正直すまんかったというほかない。傑作であろう。
冒頭からスピードある大立ち回りで、ウォー・ボーイズの集団舞踊のような動きは見事だし、地獄の亡者のモチーフにかぶってカットインするタイトルバックがあまりにもカッコいいのに感心してからは、30分ごとにピークを作りながらも120分をほぼ疾走しているという印象で、ダレ場が一瞬もない。「砦」の舞台美術は前世紀とは一線を画すものでCG技術の進歩を十分に活かしており、アクションも一つ一つが趣向を凝らしたもので飽きない。
ストーリーは極めてシンプルだが、これも狙い通りであろう。マックスは結局フォードのV8を取り戻すことはなく最早、銃身を切り詰めたショットガンをぶっ放すこともない。女たちがこの世界を脱走し、ついには立て直そうという話であればこそ救いがあって、かつての物語とはだいぶ異なる。このあたり、リメイクの『ゴースト・バスターズ』がそのスタイルを大きく変えて女性を主役に据えたのと符合し、1980年代の空気の違いと時代そのものが目指す方向を端的に示しているのではあるまいか。
そのシャーリーズ=セロンがいいというのも評判通りだし、トム=ハーディもメル=ギブソンよりも気に入ったくらいだけれど、なんといってもウォー・ボーイズをはじめとする異形の造形が素晴らしい。美術のレベルではきっちり30年の作り込みがあったと思うのである。

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