『マネー・ショート 華麗なる大逆転』を観る。サブプライム危機を予見してCDSに突進したファンドマネージャーを題材にしていることは知っていたけれど、アダム=マッケイ監督のダイレクションは意表をついていて、テーマにも関わらず奇妙に楽しい。ほとんど悪ノリというべきだけれど、ディカプリオの『ウルフ・オブ・ウォール・ストリート』と同様、この気違い沙汰がほぼ事実なのだからちょっとやそっとのドラマでは成立せず、狂騒的な演出になってしまうのもよくわかる。
マイケル=ルイスのノンフィクションは未読だけれど、おそらくはその懇切丁寧な原作を下敷きにして、本編でも状況の説明は頑張っており、わかりやすいといえばわかりやすいし、特に後半は急速にテーマが収束していく印象で盛り上がる。正直なところ冒頭、ライアン=ゴズリングが語り始めたあたりではどうなることかと思ったのだけれど、悪くない。華麗なる大逆転というような話ではないし、字幕はダイアログの良さを伝えきれていないところがあるにして。
結局のところパイプが強固ならクソも循環し続けるというあたりもよく描かれていて、言ってしまえば公的債務も同じような状況にあるのだからウォール街を嗤うだけでは済まない。一方でクリスチャン=ベイルが演じたマイケル=バーリがその後、投資対象としているのは、そんなものでもなく、水だというキャプションがあまりに黙示録的なのでちょっとビビる。