ロスト・イン・マンハッタン

『ロスト・イン・マンハッタン』を観る。リチャード=ギアがニューヨークの街をとぼとぼとうろつく長回しの映像が延々続き、どうやらこの男は行くべき場所も戻るべき場所も失って往生しているということがわかるわけだけれど、リチャード=ギアに期待されるあらゆる要素がない、そのことに意味があるという種類の映画なので劇的に面白いところはほとんどない。もともと、本人が構想を温めていたという惹句がなぜかよく使われるひとではあるけれど、社会のセーフティネットの隙間に落ち込んだ状況という題材はよいとして、当人が全てを表現しようという意欲はいささか空回りしているのではあるまいか。

プールサイド