ローグ・ワン

『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』を観る。実を言って、それほど熱心なスターウォーズファンとは言えなくて、もちろんエピソード4からの3部作は当時、劇場に出かけたものだけれど、それは基礎教養のレベルで必要だったからというのもあって、エピソード1のDVDで挫けて以降はエピソード2も3も未だに観ていないくらい。ジョージ=ルーカスがルーカスフィルムを売り払うことになったのも、当方のような観客のせいに違いない。
そんな人間がどうしてわざわざ劇場に足を運ぶのかと言えば、キャリー=フィッシャーの訃報はわずかに念頭にあったとして、主には「エピソード4の10分前までを描く」という惹句に手もなく引っかかり、そのミッションの一部始終を確認したくなったまで。この、サーガに繋がっていく外伝っぽい感じ、すごくカッコよくないですか。
そして何より、これがもともとギャレス=エドワーズの仕事だったというのが大きい。大きいのだけれど、この監督の最初の構想はダーク過ぎてディズニーの要求を満たすことができず、大幅な手直しが入ったというのも既報の通り。いや、こっちが観たいのはその真っ黒なやつなんだけど。
追加撮影と編集はトニー=ギルロイがやっていて、いかにもハリウッドっぽい、クライマックスのタワーミッションはきっとディズニーの要請によるギルロイの手直しなんだろうけど、このあたりの職人仕事は既視感を別としても好きになれない。なれないのだけれど、『スター・ウォーズ』そのものが本来こういう映画であったことからすれば、トニー=ギルロイはいい仕事をしたというべきか。
例によって中華市場を意識したのだろうけど、ドニー=イェンやチアン=ウェンがキャスティングされていて、これは素晴らしくキャラが立っているし、スター・ウォーズらしい多様性にもひと役買っており好ましい。ディズニーの方針も悪いことばかりじゃないけれど結局、金勘定と見えなくもないにして。
ギャレス=エドワーズのやりたかったことはたぶん前半に色濃く現れており、ジュダの街を哨戒する帝国軍はちょっと中東の米軍を想起させるし、風の表現や画面のレイアウトもきちんと考えられたもので、何より、往時のスター・ウォーズのコードを踏襲したコンソールやコックピットの意匠、コスチュームのこだわりは愛に溢れていて、それだけでも感動する。もともと同盟軍の梁山泊っぽい感じが好きで、このあたりの雰囲気もシリーズ随一の作りではあるまいか。愛すべきラダス提督の活躍は素晴らしい。
デス・スターがもたらす地殻津波のシーンが本作では2回もあって、ダース・ベイダー卿の立ち回りやCGで再現された往時の登場人物と並んで見どころになっている。『ポンペイ』か『ファイナル・アワーズ』かという結末もディズニー的には議論があったろうけれど、ローグ・ワンという独立愚連隊の物語としては腑に落ちる。
「この設計図を手に入れるために払われた多大な犠牲」というたったひとことに40年近く経ってから奥行きが付け加わえられるような物語が他にあるだろうかと考えているのだけれど、ちょっと思いつかない。