『ヴィヴィアン・マイヤーを探して』を観る。大量のストリートフォトを残し、しかし自らはそれを発表することもなく近年、「発見」されたヴィヴィアン=マイヤーの人生を追ったドキュメンタリー。狂言回しが彼女の作品を世に出したジョン=マルーフ本人なので、彼のヴィヴィアン・マイヤープロジェクトの一部といってよく、動機には好き嫌いが分かれるところだとは思うけれど、数々の証言を通じてみえてくる個性と才能の奥行きは謎めいて、これを解き明かしたいと思う気持ちはわかる。
だがしかし、そのエキセントリックな人となりにやや焦点が行き過ぎで、作品そのもののが後景化しているのが残念といえば残念。彼女が亡くなる以前にジョン=マルーフがオークションで大量のネガフィルムを入手している点が大いに謎だと思うのだけれど、その点については十分な究明も説明もなく、彼女の死を待つかのようにプロモーションを始めているあたりを踏まえると、あまり気持ちがよくないのも確か。
写真家としての彼女については、まず15万枚ものネガを残したそのこと自体、才能であったと言わねばならず、ある種の偏執的な収集癖にフォーカスしながら、それを彼女の撮影行為と二重写しにしないのは不思議。