君が生きた証

『君が生きた証』を観る。ウィリアム=H・メイシーの初監督作品ということよりも、当方としてはアントン=イェルチンが出演しているという興味により観始めたのだけれど、息子を亡くし遺された音楽を演奏することを通じて彼を理解しようとする父親サムを演じた主演のビリー=クラダップが、ほぼ全てをもっていっている。サムの息子をめぐり物語に施された仕掛けにもインパクトがあるけれど、劇中に使われる音楽そのものが全体の説得力に寄与していて、このパフォーマンスを実現しているビリー=クラダップとアントン=イェルチンには感心せざるをえない。ウィリアム=H・メイシーは脚本にも参加し、バーの店主の役で出演もして十分な仕事をしている。アントン=イェルチンの起用自体、趣味がよいというべきだし、何より、これまでそれなりに重要な作品に登場しながら今ひとつ影の薄い印象があったビリー=クラダップを認識したのは大きい。ちょっとウィレム=デフォーに似ているときがあって、なかなかいい男なのである。

夕暮れ