『完全なるチェックメイト』を観る。トビー=マグワイアが製作に入って、自身でボビー=フィッシャーを演じている。これが迫真の演技というもので、こちらが辛くなるほどだが、たしかにこうした人物であったろう。ジョン=ナッシュの天才と似たような演技プランとみえなくもないが、冷戦の実際にかかわって虚実の交錯する瞬間があり、勝負は時に応じて様々な顔をみせ、結末を知っていても引き込まれる。対戦するボリス=スパスキーを演じるリーヴ=シュレイバーもいい。
当のボビー=フィッシャーは永らくアメリカの敵ということになっていたわけだけれど、この作品で伝記的人物像もクレンジングされ名誉回復ということであれば、いつもの手口とはいえ多少、複雑な感慨がなくもない。