白鯨との闘い

『白鯨との闘い』を観る。メルヴィルが『白鯨』の素材にしたという捕鯨船エセックス号の遭難を題材にした映画で、劇中にも登場するハーマン=メルヴィルをベン=ウィショーが演じていたりする。もちろん作品としての『白鯨』を映像化しようなどという趣向ではなく、ナサニエル=フィルブリックのノンフィクション『復讐する海』が原作ということになっているけれど、その実態はクリス=ヘムズワース主演がウリの海洋ものというところで、鯨をはじめとするCGは例によって大したものだけれど、あくまでエンターテイメントであり、『復讐する海』に描かれる凄惨な遭難の経緯の前にはよくて水準作というレベルであろう。同じ経緯を念頭に「体験を小説化」したメルヴィルの偉業がありながら、近接した場所にこうした物語を編もうというのも少し怖れを知らないというべきではないか。