『箱入り息子の恋』を観る。星野源と夏帆による2013年の映画で、もちろん星源再評価の一環というわけだけれど、予想外によく出来たロマンスでこちらとしては泣くほかない。星野源が演じるのは市役所勤めの絶食系男子35歳で、夏帆が演じる盲目の女性との恋を通じて「箱」から出ようとする姿を描いている。主人公が飼育するカエルの姿に照らした終盤の騒動と、繰り返される負傷をもってやり過ぎという感想をもつひとがいるみたいだけれど、たとえば、涙滂沱というべき吉野家のシーンをクライマックスとしていたら、とんでもなくつまらない恋愛映画であったに違いない。入院のシークエンスを繰り返すことで、その後の主人公の行動の変化をラストにもってきたつくりはよく考えられていて気持ちがいい。
星野源は映画初主演でここまで垢抜けないキャラクターを演じたこと自体、さすが大人計画と評価しなければならないし、おそらく『逃げ恥』の津崎平匡のキャスティングに大きく影響しているのであるまいか。ほとんどキモオタという前半の様子からすると、テレビではだいぶ洗練されているとして。
そして何より夏帆である。難しい役柄を演じて違和感がないし、『海街diary』の千佳みたいなキャラクターもいいけれど、正統派っぽいこちらも魅力的。いい。
周りを固めている役者はかなりベタなキャスティングだと思うけれどきちんとした仕事をしていて、主人公の背中を押す穂のかの「無様でいいじゃん」もちょっといい。傑作であろう。