Twitterの迷い犬情報、わけても近隣の事案に接しては、念頭におきつつも日常は継続するというのが大方の市民の反応とは思うけれど、この連休中に目にすることになった「探しています」は、わりあい近所での話だったこともあって、見ず知らずの犬を捜索にでかけたわけである。SNSに出回った情報だけを頼りとして。
被疑犬が家の玄関から脱走したのが1月8日の夕刻、早い段階で第一報のTweetはされており、翌9日には同市内在住というだけのつながりのこちらにまで、その情報は伝わっている。
時期を同じくして、Twitter上には捜索願とは独立した目撃情報が三件ほどあげられており、これによって翌日の脱走場所から2km地点での消息が判明した。首輪のないトイプードルが一人で歩いている姿というのは、鄙のこととはいえ、それなりに衆目を集めたようである。
この事案は齢3歳の超小型犬についてのものだが、まずは半径1km程度を捜索というセオリーにくらべても、意外に遠くまで移動している事実があり、同様の捜索事案に際してはその可能性を念頭におきたい。
10日は目撃情報付近の捜索が重点的に行われた。当方も現地に出動し、関係者らしき数名と遭遇している。先方からすると、さても酔狂な人間と思われたに違いないにして。
この際、立ち話により聴取したところでは、保健所・市役所・警察などの関係方面には問い合せを入れてあるとの旨。概ね適切な対応と考えられ、特に警察への照会は盲点になりがちであるため、付近の交番については特に抑えておきたい。ペットについても器物に属するという発想から、保護動物をまずは警察に持ち込むというのはよくある行動であり、概ね正しい。言うまでもなく、官憲の連絡体制というのは侮れないし、この国においては市民サービスのレベルも高いのである。
結局のところ、失踪二日目の捜索は空振りに終わった。目撃地点付近の道路にまだ新しい血痕があったことは、不吉な印象を残した。この日以降、目撃情報も途絶えたのである。
翌11日。あとから聞いた話によると、手がかりのない状態にもかかわらず、諦めきれなかった飼い主は最後に目撃された付近を再度、巡回していたそうである。同様にこれを気にかけていた付近住民が、たまたま徘徊する同犬を発見、追跡を試みたものの狭所に逃げ込まれ往生したが、しかし折りよくこの場面に行き合わせた飼い主の呼びかけに対しては投降し、保護に至ったとの旨。結局、目立った外傷もなく、本人はいたって元気だったとは、三日目の自主捜索において身柄確保直後の飼い主と会い、顛末を直接、聞いた配偶者の弁である。特に知り合いでもない以上は、奇特なことではあるものの。終わりよければすべてよし。
迷い犬の捜索にあたって教訓とすべきは以下であろう。
SNSの徹底活用。Twitterであれ、Facebookであれ、まずは第一報を拡散し、あわせ目撃情報を収集する。これによって捜索地点が絞れれば発見の可能性は高まる。
今回の事例では、初日に大きく移動した脱走犬は以降、ほぼ同じ地点に潜伏していたとみられ、目撃箇所を中心に捜索ビラの重点配布を行うことの有効性を示唆している。
関係各所への問い合わせ。保健所の迷い犬情報はもちろんのこと、警察や近辺の動物病院を抑えることは重要。よくあるように、付近のスーパーなどの掲示板にビラを貼ることの効果も侮れず、初動の情報収集体制構築は以降の死活を分けると言ってよいかもしれぬ。
何より、諦めずに捜索を続けたこと。この季節、当地は氷点を軽く下回る気温となる。おりからの暖冬傾向で、この連休においても比較的に温暖ではあったものの、夜は氷の張る寒さである。発見が遅れていれば手遅れになっていた可能性もあり、それを阻止したのはやはり飼い主の功だったのではあるまいか。