『選挙の勝ち方教えます』を観る。サンドラ=ブロックがボリビアの大統領選挙に雇われた選挙参謀の役。2005年のドキュメンタリー映画をもとにしているという話だけれど、邦題の軽さに加えコメディのタグが付いていて、かつての彼女の路線に乗じてラブコメ風の期待で売ろうという狙いがみえみえだけれど、しかしユーモラスなところがあるにしてもコメディなんてものではなく、わりあい上質のドラマになっている。サンドラ=ブロックは過去に手酷い挫折を経験したプロフェッショナルを演じて、いい仕事をしており、何よりゾーイ=カザンが年齢不詳の調査員で出演しているのが嬉しい。流暢なスペイン語を操って、教養のあるところをみせている。
CIAの関与でテコ入れすることになる大統領候補をジョアキム=デ・アルメイダが演じているのだけれど、この無愛想な悪役顔のプロモーションのために国が危機にあるという認識をキーワードにして支持率を上げていく。原題の”Our brand is crisis”は主人公のセリフにもなっていてなかなか気が利いている。それが功を奏して大統領選挙には勝つのだけれど、南米の最貧国ボリビアは当たり前のように危機にあって、大統領選挙で何を約束しようがイメージだけで政治的調整が実現できるわけではないというのが物語的な結末になっている。映画自体の評判はそれほど高くなかったみたいだけれど、よく出来ているのではあるまいか。ラスト近くはコチャバンバの水戦争を題材にした”Even the rain”によく似ているけれど、これは意識してのことかどうか。スペイン人は無自覚にこの地を再び訪れたが、アメリカ人は支配のために傀儡を立てるという構図で、いずれにおいてもボリビアの民衆は蚊帳の外におかれていることに注意を向けなければならない。