『駆込み女と駆出し男』を観る。同じ2015年に『日本のいちばん長い日』を撮っている原田眞人の、これも脚本・監督で、尺も146分あってまずはその仕事量に感心したのだけれど、こちらもなかなかよく出来た映画で感心はさらに深まった。まず台詞がよく書けていて、なにしろ面白い。細かいエピソードを積み上げて人物を彫り込む手際も見事なら、クライマックスの大審問の場面は憑き物落としの大舞台でもあって、ここ数年の邦画の大収穫というべきではないか。わずかに無理に繋げたような編集が気になるところがあったけれど、いずれ長いことには変わりないのだから、ディレクターズカット版があってもよいと思う。
大泉洋は、『真田丸』の信幸以前の定番だった飄々としたキャラクターで医者見習い兼戯作者志望の主人公を演じ安心感があり、分厚い女優陣が周囲を固め、それぞれがよく光っている。これまであまり意識したことのなかった役者では御用宿の女将を演じたキムラ緑子が堂々の仕事ぶり。役者として定評のある戸田恵梨香と満島ひかりは言うまでもない。
原案は井上ひさしの『東慶寺花だより』で、読んでみようかと思うのだけれど、映画の原作としてというよりは、DVで悪名のある人間が縁切り寺と男女の機微を題材に小説を書けるということのほうに興味がある。