『007 スカイフォール』を観る。どんな映画でも2度観る必要があると世にも言うけれど、『スペクター』を観た後ではまったく印象が異なるという点で大変、面白い。サム=メンデスが監督をした最新の二作が物語の構造としてはよく似た対照をもっていることの指摘はもうあったろうか。『スカイフォール』を鋳型とするのであれば『スペクター』が鋳物であり、アストンマーチンDB5が破壊され再生する流れはもっとも端的にそれを表しているけれど、そういえば息切れをともなった007の活躍も最新作ではだいぶ上向いていて、逆にいえば『スカイフォール』は後退ぶりが見どころになっている。
『スカイフォール』がシルヴァを写しとした母と子の物語だとすれば、『スペクター』はカインとアベルの変奏であり、であれば最後にもう一作作られてもいいような気はしている。もちろんそれは父なる国家と息子の話になるだろう。