そういえば前回、第8話の演出をしていた石井康晴というひとは第5話の監督でもあったのだけれど、終盤にさしかかってのこの一話は出色の出来で、クレジットでもびっくりしたことを思い出した。演出家として突然、化けた印象で一体、何があったのか。浅い被写界深度の多用と飽和した光の使い方はこの話のクライマックスに向けて必要な仕掛けでもあったけれど、結局のところそれ以外にあり得ない演出はみていて楽しい。
引き継いでの第9話はいつもの金子監督、ディテールまで行き届いた画面はこれも楽しくて、いやもう、みんな違ってみんないい。
脚本は原作と異なる経路を辿りつつ、例によってさすがの必然性の作り込みで、ダサピンク問題や嫉妬というオリジナルの要素を投入しつつやがて6巻の山場にかかる流れ。何なら、鑑定団をここまで引っ張ることに感心してもいいけれど、そこから登場人物がほっこりする会話を編み出していく手つきにこそ感動するわけである。
平匡さんたる星野源が、自身がパーソナリティを務めるオールナイトニッポンで、第8話で母の桜さんが、来るなと言ってもやって来た娘に「ずっといてもいいのよ」と言ったのは、つまり「帰れ」ということと語っていたけれど、自分の出演シーンでもない、ト書きにないこの心情をきちんと読み取って演じる役者陣であればこそ奥行きというものがあって、今回も堪能した。だいたい、もはや星野源のファンといってもいい。