何ごともきっちり研究を続ける方なのでハマれば沼が深いタチである。一般にはオタク気質と認識されて、概ね外れていない。『逃げ恥』原作研究も既刊だけでは飽き足らず、取り敢えずはこれ以外に読むところのない掲載誌『Kiss』の電子版をKindleで発売日に買い求めて読んだりもする。いや、電子書籍の敷居の低さは偉大と思いつつ、白泉社のコミックスと『ララ』が愛読書の一角を占めていた青春時代から、実はほとんど成長の形跡はみられない。
それはともかく。『逃げるは恥だが役に立つ』の原作マンガの方も最終回直前となっていて、この平仄は意図的に揃ったものかはよくわからないけれど、タイミングとしてドラマと結末も合って行きそうなので、やはり待ってらんないという雰囲気。
今回は、久しく影が薄くなっていた主役の二人が前景化して、新たな生活の点検を行うという結論一歩前、ほぼ食卓での会話ではあるものの、発注と受注に始まりビジネスライクな日常と内面のすれ違いを続けてきた関係が、建設的で前向きなやりとりで総括されるので、その成長が気持ちいいというアゲの回。
家計に家庭内家計を持ち込むというコンセプトで始まったこのマンガが、原始的な交換経済からいわゆる贈与経済の考え方に移行しようという展開で、表現が直截的であるだけに、リアルな多くの人たちの生活に働きかける可能性すらもっている。貨幣経済という強烈なシステムのなかで、浅ましさの対極に自分を位置づけることになるその心がけが大事だというシンプルな話を、素直に教えてくれる物語は案外、少ないのである。
ドラマ直近話の「感謝と敬意」というキーワードが、このあたりに収斂していく可能性も窺えて、やっぱり楽しみになっている。