MI5 世界を敵にしたスパイ

『MI5 世界を敵にしたスパイ』を観る。相変わらずの邦題だけれど原題は『Salting the battlefield』で『Page Eight』に始まるJohnny Worrickerシリーズの完結編。ローマによってその地に塩が撒かれたというカルタゴ滅亡の故事を想起させる題名だけれど、いつものように大人の話なので激烈な印象はあっても銃弾が飛び交うわけではなく、もちろん暴力すらなくて、あくまで文明化された人たちの争いなのである。
レイフ=ファインズ演じる英国首相とビル=ナイのWorrickerの因縁にカタがついて、物語は円環を閉じるのだけれど、ヨーロッパ大陸を逃亡しながら続けられるテーブルの下の静かな足の蹴り合いは、ハリウッド調の大掛かりな活劇とは一線を画して、しかし滅法面白い。微妙に割り切れないところを残しつつ、出来ればレイチェル=ワイズの再登場があれば嬉しいという願望もあったのだけれど、すべてはビル=ナイの前にどうでもよいことである。ユエン=ブレムナー演じるロロの出番が多いのも嬉しい。

百合