『Mr. ホームズ 名探偵最後の事件』を観る。名探偵ものでの「最後の事件」というのは重要なサブジャンルであり、どちらかというとドラマチックな途絶を語るためのものだけれど、このホームズは引退後の老いと向き合うホームズであり、自分が手がけた現役最後の事件を言葉どおり思い出すのに苦労しているという趣向で、回想のなかで物語は何となく進行する。マグニートーことイアン=マッケランが年老いたホームズを演じており、どうしてか終戦直後の日本を訪問するので、真田広之がホストを務めたりしている。
そしてこのホームズはワトソンが広めた記号をまとわず、パイプよりも葉巻派だったりするので、あまりホームズらしくないのも確か。もうかなりガタがきている様子なので、何だかしんみりしてしまう。ミッチ=カリンの原作は未読だけれど、事件はないに等しく、少年との交流が主なドラマで、その母親の家政婦には妙に邪険にされているので引退後、空白の30年の事情がどこかで語られると思いきや単に厄介者扱いされているだけと知れて、これにはがっかりする他ない。