Rough Draft

OS XであれiOSであれ、App Storeを覗いて新しいアプリを探すのを好むというのはあまり生産的な趣味とは言えまいが、ある種の病であって仕方がない。このたびはRough Draftというエディタがフィーチャーされていて、つまりは削除履歴を逐一保持して表示するというコンセプトが売りのアプリで、なるほどそれがあったと膝を打ったわけである。
この場合、ワープロが装備している修正履歴の機能とはちょっと違って、推敲の過程においてバージョンごとの変更を捉えるのではなく、初回のアウトプットから、とにかく変更の経緯を残すという趣向であり、ありそうでなかったコンセプトと言えるのではあるまいか。
テキスト系のエディタではフルスクリーンを旨とする禅風の表示が一世を風靡したのだけれど、こぞって実装された結果、いささか陳腐化した感があって、しかしこうしたドラフト機能は同様のムーブメントとなりそうな気がしなくもない。シンプルだけれど、生産性の本質的な観点で奥行きのあるアイディアだと思うのである。
我々は文章を完成するまでに無数の言葉をアウトプットしており、そのプロセスを可視化して残す機能は、そもそも手書きとタイプライターには存在していたわけである。編集自在のデジタルの世界において、それゆえに零れ落ちていく膨大な言葉をとどめることからは新たな意味が生じるに違いない。
などと壮大な思いを馳せつつ、日本語の環境ではIMEの仕様的な問題で、あまりうまく機能しないような気がしており、入手無料のこれをまだ試していないので何も言えないにせよ。