『われらが背きし者』を観る。ユアン=マクレガー主演によるサスペンスだけれど、ル=カレの原作なのでヨーロッパ全域を舞台にしながら派手すぎず、奥行きがあるところがいい。鬱屈を抱えたMI6のエージェントがダミアン=ルイスで、ウィンターズ少佐の印象が強いので意外な気もするけれど、この人もロンドン出身なのである。いかにもル=カレの登場人物という風で、なかなかいい。この原作者はこのところ映画製作に熱心で、脚本を書いた『テイラー・オブ・パナマ』はともかくとして、『裏切りのサーカス』以降、『誰よりも狙われた男』とこの作品でも製作総指揮に入っており、前2作ほどではないとはいえ本作もそれなりの水準にあって、今さらながらなかなかレベルの高い仕事をしている。ユアン=マクレガーの役回り自体、見せ場などないようなものだから、巻き込まれ型のサスペンス風のつくりになっているのが誤読を誘うけれど、無論のこと、これは勤め人風のダミアン=ルイスを主軸とした物語として捉えなければならない。