『ザ・コンサルタント』を観る。ベン=アフレックの監督としての仕事だけでなく、俳優の仕事もかなり好きなので、あの兄弟の最近の精力的な仕事ぶりはうれしい。
高機能自閉症で特殊戦の軍人を父に持つ主人公が、生業としている会計コンサルタントの仕事でトラブルに巻き込まれ、過激な反撃を通してその生い立ちが徐々に明らかにされる話。本邦の予告では「本業、腕利きの殺し屋」などと言われているけれど、武闘派の父に格闘技を教え込まれ、もともと闇社会にかかわり人を殺めることに容赦はなくとも、それを職業としているわけではないので、言われようは適切とも思えない。謎めいた男が止むに止まれず戦いに身を投じ、その異能によってヒロインの窮地を救うというのは風来坊ものの基本フォーマットを踏襲しているけれど、開巻、本人の幼少期と高機能自閉症としての事情が語られるあたりが目新しく、主人公の来歴について委細に謎は残しながら、しかし過去に関わる人間関係のパズルが解かれる面白さもあって128分が長くない。
家族の事情と裏稼業の事情とを二重に通底させながら、たまたま巻き込まれた事件が前景にあって、実はわりあい込み入った話なのだけれど違和感なく構成されている。監督は『プライド&グローリー』のギャヴィン=オコナーで、そうえいばあの話も手際は悪くなかったし、脚本のビル=ドゥビュークは『ジャッジ』でもちょっと毛色の違う法廷ものを書いており、概ねこのあたりの手柄ではあるまいか。もちろんベン=アフレックも悪くないのだけれど、重量級の格闘がすっかり板についてしまった感じ。昔はもう少し繊細なところが勝っていたと思うのだけれど、月日は流れる。