『スポットライト 世紀のスクープ』を観る。カトリック教会での長年にわたる性的虐待事件とその隠蔽が、ボストン・グローブの連続的な報道で大きく取り沙汰された2002年、その端緒から調査報道の第一報までを扱った映画で、マーク=ラファロとマイケル=キートン、レイチェル=マクアダムスにスタンリー=トゥッチまでいる豪華なキャストで見応えがある。ボストン・グローブがニューヨーク・タイムズに事実上、買収された直後の話だけれど、そのニューヨーク・タイムズの記事を発端としてハリウッドの性的虐待が次々と明るみに出ている現状も考えると、いろいろあったとしてもかの国のジャーナリズムは仕事をしていると感じざるを得ない。構造的な腐敗を引き出そうという視座は共通しており、さらに言うなら、本邦のメディアがそのように機能しているようには思えないのである。
もちろん派手な話ではないけれど、それなりに重厚なつくりになっていて、21世紀になったばかり、今となっては微妙に懐かしい雰囲気がうまく表現されている空気感には感心したのである。役者もいい仕事をしており、アカデミー賞の作品賞と脚本賞をとっているのも違和感がない。追求を行う側も、かつてはこれを見過ごしていたという描き方が評価されたのは、今にしてハリウッドの自浄作用かと期待させるものがあるし、それがエンターテイメントであっても倫理的なテーマを扱うことの意義はやはり大きい。