『セッション』を観る。わずか2作で監督としての評価を確立した感のある『ラ・ラ・ランド』のデイミアン=チャゼルが、ジャズドラマーを目指していた自身のキャリアを踏まえて脚本・監督をしたメジャー1作目。J=K・シモンズのパワハラ指導者ぶりが評判になっていたけれど、最小限の色恋沙汰の部分が余分と思えるくらい、主人公のマイルズ=テラーとJ=K・シモンズの暑苦しい絡みが延々という作品で、しかし濃厚な107分があっという間。主要な登場人物といえば父親と主人公、それにJ=K・シモンズが演じるフレッチャーの3人のみで、他の出演者が後景化していく話の紡ぎ方こそ監督の才能を示している。そして音楽もさることながら、演奏パートでの劇画っぽい派手なコマ割りが全体をグリグリ揺さぶって、映像としてもよく出来ているのである。面白い。
J=K・シモンズは音楽映画に突如出現したハートマン軍曹の役回りを嬉々として演じており、クライマックスまで目が離せない。本作のサウンドトラックにもそのドSなダイアローグがわざわざ収録されていたりするので、音楽を題材にしたスポ根ものというより、むしろJ=K・シモンズの因業ぶりを描く映画と言ってもよいのではあるまいか。