『ソロモンの偽証』を観る。このところ宮部みゆきの小説を読んでいないこともあって、長大な原作は未読。映画のほうも前後編で260分という大作だけれど、原作が4,700枚ということであれば無理もないのである。主人公の藤野涼子は芸名も同じ藤野涼子で、この作品に向けた大規模なオーディションによって選抜された新人のデビュー作でもある。こちらにとっては乙女寮の豊子ということになるのだけれど、訛っていない。この直後に出演した『クリーピー』でも堂々とした演技をみせていたけれど、らしからぬ風格というほかない。大人たちも達者な役者が多く出演しているのだけれど、ストーリーの中心におかれた少年少女が総じていい仕事をしており、ことにこの藤野涼子はときどき松岡茉優みたいな雰囲気をみせることがあって、重要な役者になるに違いないと思うのである。
1990年を舞台として冒頭、「気象予報士」という言葉が出てきたくだりはおそらく考証上のミスで、そうした単語が用いられるようになるのは数年後のことになるけれど、全体としてきちんとしたつくりとなっており、とにかく前後編のテンションを保たせているところは立派。いかにも宮部みゆきっぽい話になっているし、法廷の場面も真実を述べるというルールのもとに各人が役割を踏み越えていくあたりに面白味があって悪くない。
佐々木蔵之介はもとより宮部世界的なキャラクターなので父親の刑事役というのは適役として、夏川結衣がちょっと貫禄のある母親役というのはびっくりしたけど案外よくて、これもまた適役でキャスティングも総じていい感じ。