三枝匡といえばプロの経営者としてひとときにはブランド化しており、2016年に出版されたミスミの改革本も中身はケーススタディだとして、もちろん滲み出る自負は隠しようもなく、冒頭の事務所のくだりは大藪春彦かという印象でかなりキツイ。そうはいっても半分以上は成り行きだということが察せられる改革の物語にはむしろ好感がもてるのだけれど。だいたい、340人の会社が1万人になったというパンチラインを採用しているあたりに苦労も察せられるというものである。いまどき人数がKPIになるということもあまりないのではあるまいか。
思えば、民主党が政権をとったときの改革スキームは外資コンサルの臭いがプンプンしたものだけれど、その適用の成功例がコレだとすれば、そもそも骨法の異なる国政に小賢しいフレームワークを持ち込もうというアイディアそのものが大間違いだし、今にして思えばその愚かさは実に罪深いものだった。