『ボーダーライン』を観る。エミリー=ブラントがCIAの国内活動に利用されるFBIの役。話は現場版の『いま、そこにある危機』かと思いきや、硬派な復讐譚が絡み、そのベニチオ=デル・トロも実に渋いのだけれど、ドゥニ=ヴィルヌーヴ監督の構成するレイアウトは印象的で美しいカットが多く、画面の中に作られた動きが象徴的であることもたびたびで、映像としてとにかく見応えがあるので非常に満足感が高い。神に見放された土地のこの神々しさはどうだ。
それに比べたら登場人物はステレオタイプに近いというべきだけれど、全体にバランスがよくて演出の意図も明快なので、最後までテンションを保って観ることができる。序盤、ガラス張りの会議室の中と外との分断からして映画的な予感に満ちているし、これはなかなかのものである。