マギー

『マギー』を観る。どうやら終わりつつある世界で、キャリアに噛まれることで徐々にゾンビ化していく感染症に罹った娘が、家族との日々を経て最期に到るまで。主人公をアビゲイル=ブレスリン、父親をアーノルド=シュワルツェネッガーが演じている、たぶん終末もの。
物語はひどく物静かに進行し、被写界深度は浅く、光は柔らかく、浅ましい人たちがゾンビものに期待する血と暴力はほぼ存在しないというのが目新しさで、『メランコリア』ほど観念的ではないけれど、ちょっと近い匂いがする。アーノルド=シュワルツェネッガーが出演しているゾンビものに、これを求める観客がいるかは微妙なところだが、かの御大もさすがにいい歳なので、もうドンパチじゃないというのもわかる。当人にとっては『ターミネーター』以来の低予算映画だそうだけれど、だがしかし、アビゲイル=ブレスリンの実の父親というのは年齢的に無理があるまいか。
やがてはゾンビとなって人間を襲うようになるというこの病が、発症自体は遅行性のもので数週間の猶予があるというのがポイントなのだけれど、感染がわかってもすぐには隔離されず、それどころか家に帰ることが許されるという部分には妙なリアリティがあるし、全体のトーンも悪くはない。ヤマもなくオチもないのが難点で、葛藤も浅くみえるので、残念ながらちょっと退屈。

諏訪湖