『ミッドナイト・スペシャル』を観る。『テイク・シェルター』のジェフ=ニコルズ監督が再びマイケル=シャノンを主人公として描く家族の物語。不思議な能力により教団のイコンとなり、政府機関からも追われることになった我が子を連れて逃げる父親がマイケル=シャノン、これを助ける幼馴染の州兵ルーカスがジョエル=エドガートン。そのルーカスが抜群にいい。
饒舌なところのまるでないジェフ=ニコルズの語り口は冒頭から窺い知れぬ緊迫感があって、暗闇を無灯火で疾走するムスタングの逃避行から徐々に明かされる事の次第はやがて逸脱の度を高めていくのだけれど、このパラノーマルなイベントは親と子の別離についてのメタファーでもあって、その二重写しから浮かび上がるストーリーの奥行きは深い。あからさまに『光る眼』を彷彿とさせつつ、SFサスペンスのジャンル映画というわけではないのである。クライマックスにあらわれる構造物は天上のそれで、去っていく我が子を見送る母の心持ちやいかに。その母親をキルステン=ダンストが演じており、母親の役は初めてでそれが感慨深くもあったけれど安定の仕事ぶりに安心した。
全体にストイックなトーンであり、旬のアダム=ドライヴァーなども配されて脇のキャラが立っているので、マイケル=シャノンの個性は程よく抑制されている印象で、強いアクのあった『テイク・シェルター』よりも全体のバランスがいい感じ。なかなか面白いのである。