『境界線』を観る。アイスランドを旅しているカップルがある日、目覚めると世界から人がいなくなっていたという話。誰もが妄想したことのあるリアル『ビューティフル・ドリーマー』設定だけれど、そもそも人口密度の低い最果ての国が舞台であれば映像には妙な説得力があるし、何しろひと気のないアイスランドの町並みは美しく、大自然の存在感は圧倒的。ハッセルブラッドのカメラで写真を撮りながら旅をするような男女が主人公なので、サバイバルも今ひとつ真剣味が足りないという気がしなくもないけれど、被写界深度を外れた背景は時に美しくボケて全てがフォトジェニックなので見られる。何しろ原題が『BOKEH』である。そうはいっても思弁や信仰の会話はあるし、特に2/3を越えたあたりからは急に奥行きが深まってなかなか面白い。そこだけ音楽を被せてこないエンディングロールもなかなかいい。