嫌な女

『嫌な女』を観る。吉田羊と木村佳乃がダブル主演というのが目玉の映画で近作であるわり、あまり話を聞かないと思っていたのだけれど、どうやら黒木瞳が初めて監督をした挙句、興行的には壊滅といっていい結果だったらしく、その予備知識がなかったとしても、なるほど観るべき映画とも思えない出来でかなり辛い。例えるなら画面は油凪の海面のように妙にこってりとしたもので、レイアウトにはセンスの片鱗も窺うことができず、何もかもが妙に古臭く、スタッフに才能があったとしてやる気だけはなかっただろうことが見てとれるので、制作現場もうまくいっていなかったのではあるまいか。それなりのキャストを投入して出来上がった105分の空虚も、ひと昔前の邦画であれば珍しくもなかったわけだけれど、業界全体における近年の打率の上昇を思えば、あらかじめ淘汰されていてもおかしくないはずで、90年代の亡霊のようなこれを、これはこれとして許してはいけないような気すらする。

雪道