『海よりもまだ深く』を観る。是枝裕和の映画は『海街Diary』一点推しでオリジナル脚本はどちらかといえば苦手なのだけれど、何故かといえば登場人物のありそうな造形が容赦なくイタいからで、自称作家の良多が「取材」と称する探偵業を通じて人々が吐き出した言葉を収集している場面があるけれど、是枝監督も同じような作業をしているに違いなく、実にそんな感じなのである。
とはいえ、もちろん映画的語りは基本的に豊かなもので感心することが多い。いくつものセリフを結末にかけて回収していく手際や、2世代にわたる父から子への継承を1フレームに収めてしまった電車の場面にはうなる。映画の面白さというのはこういうものであろう。