『生きてるものはいないのか』を観る。前田司郎の戯曲をもとにした石井聰亙改め石井岳龍の監督による映画化。脚本は前田司郎が書いており、セリフには舞台の風味が強く登場人物の行動は時に不可解だけれど、ことが起き始めるセットアップの段階が妙に面白くて見入ってしまう。人が突然、次々と不可解に死んでいくという話で、言ってしまえばそれだけの話なのだが、事態が出来するまでの雰囲気が悪くない。
エリーこと高橋真唯改め岩井堂聖子が登場して、実はそれが目当てといっても過言ではないのだが、いい感じの日常会話の果て「うまみっ」と言い遺して速やかに死んでしまうので、そればかりは残念。もともとそういう話であるからには仕方がないとはいえ。
ことが起きてからのほうが、むしろ普通の日本映画に見えるところが個人的には興味深く、特権的な死をあたかも平凡なものであるかのように描くのは邦画が繰り返し行ってきたところなので、かえって目新しさはないみたい。