川崎草志の『誘神』を読む。『長い腕』から10年以上のブランクを経て続編を出して以降、その三部作のほかに『疫神』という長編もあって、これはそれと同じ世界に連なる話。『疫神』は好物のパンデミックものの要素で話が立ち上がるのはいいとして、人類の種としての進化という高野和明の『ジェノサイド』っぽい内容にまで広がって、しかし急速に萎む印象があり、そもそも登場人物の役割もよくわからないところがあるので、あまり感心しなかったのだけれど、本作はそこまで大上段な振りもないので何となく話は収まっている。しかし、『疫神』を知らなければまったく理解できないだろう事件の真相もあったりして、万人にオススメできるかといえばかなり読み手を選ぶ印象。京都パートの一家には見せ場と呼べるようなイベントがほとんどなかったり、作中の疫病の役割もついに前景化することなく、パラノーマルな世界に分け入ってしまうので、読後感は前作とよく似ており、背景に大風呂敷があるようだけれどその全貌は未だ見えてこない。続きがあるのかも定かではないけれど、徐々に読者が振り落とされる心配はあって何らかの戦略が必要ではあるまいか。