『顔のないスパイ』を観る。リチャード=ギアがCIAの元エージェントという設定だけで何がしかの警戒心が頭を擡げてくるけれど、変化球ながら予想通りというところがあって、しかし水準作といえば水準作なのでいろいろ微妙。アイディアはあるけれど、細部のツジツマが合っているわけではないので評価は辛くなる。そもそもリチャード=ギアから透ける自意識のようなものが苦手なのはあるにして。
この映画が作られた2011年当時、アメリカ国内で活動するロシアスパイというアジェンダはずいぶんと古めかしい感じがしたに違いないのだけれど、そのこと自体は今となって妙なリアリティがあり、なるほど時代は回転木馬のように廻る。作品中ではロシアの存在が後景化しているのが残念といえば残念なほどである。