このところ、KindleではなくiBooksで買い求める本が徐々に増えてきていて、何がいいかといえば組版がキレイなので心地がいいのである。この微妙な違いは案外、重要で、以前も書いたことだけれどノドアキが設定されているほうが読み易いのだから仕方がない。デザインに関してスキューモーフィズムの思想というのは宿命的に垢抜けないと思っているけれど、こればかりは実際の本を模しているというのがかなり重要なのではないか。綴じがないならノドアキも要らないというKindleのデザインもわかるけれど、1ページの分量は脳においてある種のバッチ単位になっていて、機能的な意味があると思うのである。
というわけで佐藤究の『Ank: a mirroring ape』をiBooksで読んでいる。もともとパニックものに目がないほうだし、なにしろ舞台が京都であれば何であれ跨いで通るわけにもいかない。ゾンビものやパンデミックものに通じる状況を重ねつつ、しかし『ワールドウォーZ』の洗練と奥行きは到底ないけれど、伊藤計劃というより瀬名秀明かというストーリーには90年代の雰囲気があって、妙に懐かしい気がしたものである。