『SR サイタマノラッパー』を観る。さいたまの北西、ほぼ群馬というべき深谷市に重なる「福谷市」を舞台に、デブでニートなHIPHOPワナビの日常を描いて、概ね痛く、あまりにもイケてない様子は笑うしかないけれど、クライマックスは居住まいを正す熱量があって何がしか残るものがある。技術的にも、もしかしたら演技そのものも、ほぼ自主制作映画のレベルで、一応、音楽を題材にしているにもかかわらず、のっぺりとこもった音にもまず驚いたのだけれど、手作りであれば音の処理に困難があるのは当然で、しかし後半は技術的にも向上がみられて、かなり試行錯誤して作られた形跡さえある。
「宇宙人かよ、お前」「働け」とあまりにも直截なセリフを投げつけられ、行きがかりでボコボコに殴られつつそれを理不尽とも思わない日常のなかで、Brotherhoodなどなくてあるのはブロッコリーだけという現実を写し、それだけといえばそれだけなのだけれど、おそらくは低予算であるがゆえに、そして技術もともなわないがゆえに必然的に多くなる長回しが独特のリズムを生んで、印象的なラストシーンに結実している。凡百の邦画が同じ作りを踏まえて一顧だにされず来たこととの違いは一体どこにあるのかを考えるだけでも楽しい。