国際的な政治状況を抽象的に捉えるというのは誰にでもできる仕事ではないが、この20年近く、ことに政治リスクの全体状況を理解するためのグランドデザインを描き、キーワードを提供してきた第一人者といえばユーラシアグループのイアン=ブレマーで、たぶんそれほど異論もないのではあるまいか。少なくともその見立てを枠組みとすることで、地政学に関する理解は整理され、だいぶ頭の風通しがよくなるので、知見についてはできるだけフォローするようにしている。リスクと目されるもののなかには、あたかもリスクであるかのような誤認を誘うものも多く混じっているものだけれど、2017年のトップリスクを「わが道を行くアメリカ」としながら「有権者の半分近くが、自分たちの生涯で最も重要な今回の選挙でさえ、 敢えて投票しなかった」ことを踏まえて、アメリカの国内政策はレッドへリングに過ぎないと整理してみせた選球眼はさすがと見える。なお、政治的無関心が支配的であるという見方には含蓄がある。
だがしかし、そのイアン=ブレマーが、2017年は第二次世界大戦以来、政治的リスクの観点から最も重要な年になるとツイートしていて、賢人の眼に世界の先行きはどのように映るのかとちょっと動揺している。
I like to think I'm an optimistic guy, but 2017 is the most significant year for political risk since World War II.
— ian bremmer (@ianbremmer) 2017年1月30日