『しあわせのかおり』を観る。金沢で中国人の亭主が営む中華料理店に弟子入りしたシングルマザーの人生の転機を料理を通して描く。脳梗塞に倒れ思うように料理を作れなくなった亭主を演じているのが藤竜也。日本海を挟んだ向こうにある故郷を思う寡黙な異邦の人の雰囲気をまとい、料理の手つきも危なげがない。登場する料理はどれも美味しそうだし、日本の包丁とは異なる菜刀の使い方ひとつで物語に加わる説得力が素晴らしい。唐突に旅情ものに転調するあたり、いかにも日本映画の特徴を備えてはいるけれど、それほど悪い印象もなく、中谷美紀はいい仕事をしていて、どうにも痩せすぎというのが唯一の瑕疵か。