ちはやふる -結び-

『ちはやふる -結び-』を観る。『上の句』『下の句』は自分内で邦画再評価の契機となった印象があり、続編の制作もうべなるかなという楽しさだったけれど、完結となるその本作でも完成度は維持されており、前作から2年経って既に中堅というべきキャリアを積んでいるメンバーに、清原果耶や優希美青、さらには永世名人周防の役で賀来賢人が加わりキャストも豪華というほかない。
競技かるたに情熱を傾ける高校3年間というスポ根としての枠組みに応じてオーソドックスな成長譚とみることもできるけれど、周防と太一という師弟の物語でもあり、小倉百人一首に託した贈与の物語でもあって、横軸のテーマがしっかり入っているので全体に構築がしっかりしている。団体戦にフォーカスしたつくりも練れていて、よろしいのではなかろうか。
小泉徳宏監督の撮る広瀬すずと松岡茉優の透明感は素晴らしくてもちろん見どころではあるけれど、賀来賢人の周防名人のキャラクターは一頭地を抜いていて、前面に出てこないバックストーリーの存在をそこかしこでチラつかせてみせる脚本の出来も素晴らしい。これも小泉監督の手によるもので、いい仕事をしていると思うのである。